Purity of essence

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現代経済学の直観的方法(長沼伸一郎)

わかりやすくもあり、示唆にも富むというすごい内容だった

 

・日本は欧米列強の搾取から守るために資本主義を導入せざるを得なかった

・資本主義はその外見とは裏腹に実は極めて原始的な状態であり、これ以上壊れようがないから生き残っているのではないか?

 

というのは突飛すぎて若干説得力に欠けながらも直観的には本質をついている気がする。

特に後者は確かに納得できる点が多い

資本主義の本質は「自由競争」、「価格は需要と供給で自然に決まる」、「強いものが勝つ」あたりなわけだけど、これらは実に原始的な要素なのではないだろうか?

専門家が熟議の上で優劣を決めるわけでもなく、複雑な計算で価格が決まるといった文明的プロセスは一切取らず、ただ自然な成り行きに任せるという自由放任主義を述べているだけにすぎない。

そもそもアダム・スミスニュートン万有引力にヒントを得て、自然界だけではなく、経済や社会にも根源的な原理原則があるのではないだろうか、という点から資本主義を導いたわけで、決して人間の手で経済をどうにかしよう、という意図はなかったはずだ。

こうして資本主義は散々問題を抱えながらも自然な選択として生き残っているわけだ。

100年に1度の経済危機といわれ資本主義の終焉とすら囁かれていたリーマンショックですら、世界経済はたった2,3年で立ち直ってしまったという事実はその裏付けになるであろう。

 

むしろ経済が破綻するのは、軍事力なり政治圧力なりで、自然なプロセスである資本主義を無理やり押し込めようとしたときなのではないだろうか?

例えば軍事力で資本主義に対抗しようとしたソ連、通貨の乱発という手法で抑え込もうとしてハイパーインフレを引き起こしたドイツ、など